介護

【特養:運営】法令からみる「配置医師」の定義

そもそも「配置医師」って何なのさ?

特養をやっていると、日常的に「嘱託医」「往診医」という言葉はよく使うと思います。
それが、指導監査や介護報酬、診療報酬、基準などの話になると、「配置医師」という言葉が出てきて、逆に「嘱託医」「往診医」という言葉が出てこなくなります。

感覚的に「嘱託医」と混同してしまうことが多いですが、実際の定義をしっかりと抑えておいた方がよいと思いますので、調べてみました。

福祉系の法令上の「配置医師」の定義

そもそも「配置医師」という言葉の定義は何でしょう。

・指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(告示)
・指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(告示)
・指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(通知)

の3つを調べてみます。(2021/04/13時点)

「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」には、配置医師という言葉は出現せず。
「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」に、それっぽいのがありました。

指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準

1 介護福祉施設サービス
ワ 配置医師緊急時対応加算

注 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た指定介護老人福祉施設において、当該指定介護老人福祉施設の配置医師(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第2条第1項第1号に規定する医師をいう。以下この注において同じ。)が当該指定介護老人福祉施設の求めに応じ、早朝(午前6時から午前8時までの時間をいう。以下この注において同じ。)、夜間(午後6時から午後10時までの時間をいう。以下この注において同じ。)又は深夜(午後10時から午前6時までの時間をいう。以下この注において同じ。)に当該指定介護老人福祉施設を訪問して入所者に対し診療を行い、かつ、診療を行った理由を記録した場合は、診療が行われた時間が早朝又は夜間の場合は1回につき650単位、深夜の場合は1回につき1,300単位を加算する。ただし、看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は、算定しない。


配置医師=指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第2条第1項第1号に規定する医師」だそうです。

さて、基準第2条第1項第1号見てみよう。

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

第二章 人員に関する基準

(従業者の員数)
第二条 法第八十八条第一項の規定による指定介護老人福祉施設に置くべき従業者の員数は、次のとおりとする。ただし、入所定員が四十人を超えない指定介護老人福祉施設にあっては、他の社会福祉施設等の栄養士又は管理栄養士との連携を図ることにより当該指定介護老人福祉施設の効果的な運営を期待することができる場合であって、入所者の処遇に支障がないときは、第四号の栄養士又は管理栄養士を置かないことができる。

一 医師 入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数

『配置医師=「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行う」医師として介護老人福祉施設に置かれた従業員』だそうです。

「健康管理及び療養上の指導」ってなにやるのさ、と思いませんか?
ついでに調べてみましょう。

第四章 運営に関する基準

(健康管理)
第十八条 指定介護老人福祉施設の医師又は看護職員は、常に入所者の健康の状況に注意し、必要に応じて健康保持のための適切な措置を採らなければならない。

と色々調べたけど、ここまで。「療養上の指導」に関しては特に項目での記載は見当たりません。
「健康管理及び療養上の指導」については、改めて書きます。

指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について

第二 居宅サービス単位数表(短期入所生活介護費から特定施設入居者生活介護費に係る部分に限る。)及び施設サービス単位数表

5 介護福祉施設サービス
(12) 精神科を担当する医師に係る加算について
⑤ 健康管理を担当する指定介護老人福祉施設の配置医師(嘱託医)が一名であり、当該医師が精神科を担当する医師も兼ねる場合は、配置医師として勤務する回数のうち月四回(一回あたりの勤務時間三~四時間程度)までは加算の算定の基礎としないものであること。(例えば、月六回配置医師として勤務している精神科を担当する医師の場合:六回:四回=二回となるので、当該費用を算定できることになる。)

これを読む限り、「配置医師は、月4回程度、1回あたり3~4時間程度の勤務内容」を想定していると考えられます。

ここまでのまとめ

配置医師
・入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行う医師として介護老人福祉施設に置かれる従業員
・勤務は1回3~4時間、月4回程度を想定

医療系の法令上の「配置医師」の定義

さて、ここまで福祉系の法令上での「配置医師」の定義を確認してきました。

「配置医師」は「医師」であるが故、施設側から見た側面以外に、医療機関側からみた側面もあるわけです。
その点を踏まえ、医療系の法令上の「配置医師」の定義を確認してみましょう。

「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について

1 保険医が、次の(1)から(6)までのいずれかに該当する医師(以下「配置医師」という。)である場合は、それぞれの配置されている施設に入所している患者に対して行った診療(特別の必要があって行う診療を除く。)については、介護報酬、自立支援給付、措置費等の他給付(以下「他給付」という。)において評価されているため、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号A000の初診料、医科点数表区分番号A001の再診料、医科点数表区分番号A002の外来診療料、医科点数表区分番号A003のオンライン診療料、医科点数表区分番号B001―2の小児科外来診療料及び医科点数表区分番号C000の往診料を算定できない。

医療側の法令を見たところ、定義づけがされていました。
長いので、まず途中まで引用しました。
めちゃくちゃ重要と思うところをマーカーしたら、ほとんど大事な文章でした。
簡単にまとめると、以下のような感じになります。

配置医師
・一定の条件に該当する保険医
・施設に入所している利用者にした診察は介護報酬に含まれている。
・よって初診料や再診料、往診料など一部の診療報酬は算定できない。

続けて、「一定の条件」を見てみましょう。

(1) 養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(昭和41年厚生省令第19号)第12条第1項第2号、特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第46号)第12条第1項第2号、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第121条第1項第1号又は指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第35号)第129条第1項第1号の規定に基づき、養護老人ホーム(定員111名以上の場合に限る。以下同じ。)、特別養護老人ホーム、指定短期入所生活介護事業所又は指定介護予防短期入所生活介護事業所に配置されている医師

(2) 病院又は診療所と特別養護老人ホームが併設されている場合の当該病院又は診療所(以下「併設医療機関」という。)の医師

なお、病院又は診療所と養護老人ホーム、指定短期入所生活介護事業所、指定介護予防短期入所生活介護事業所、指定障害者支援施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)(以下「障害者総合支援法」という。)第5条第7項に規定する生活介護を行う施設に限る。(3)において同じ。)、盲導犬訓練施設、救護施設、乳児院又は児童心理治療施設が合築又は併設されている場合についても同様の取扱いとする。

(3) 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第172号)第4条第1項第1号の規定に基づき、指定障害者支援施設に配置されている医師

(4) 障害者総合支援法第5条第6項に規定する療養介護を行う事業所(以下「療養介護事業所」という。)に配置されている医師

(5) 救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する最低基準(昭和41年厚生省令第18号)第11条第1項第2号の規定に基づき、救護施設(定員111名以上の場合に限る。以下同じ。)に配置されている医師

(6) 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第21条第1項又は同基準第73条第1項の規定に基づき、乳児院(定員100名以上の場合に限る。以下同じ。)又は児童心理治療施設に配置されている医師

配置医師
・特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準に基づき配置されている保険医
・特別養護老人ホームに併設されている病院又は診療所の保険医

さて、もう少し続きます。

2 保険医が次の表の左欄に掲げる医師に該当する場合は、それぞれ当該保険医(併設医療機関の医師を含む。)の配置されている施設に入所している患者に対する一部の診療については他給付で評価されていることから、同表の右欄に掲げる診療報酬を算定できない。

保険医診療報酬
配置医師(全施設共通。)・医科点数表区分番号B000の特定疾患療養管理料
・医科点数表区分番号B001―2―9の地域包括診療料
・医科点数表区分番号B001―2―10の認知症地域包括診療料
・医科点数表区分番号B001―2―11の小児かかりつけ診療料
・医科点数表区分番号B001―3の生活習慣病管理料
・医科点数表区分番号B007の退院前訪問指導料
・医科点数表区分番号C101の在宅自己注射指導管理料
・医科点数表区分番号C101―2の在宅小児低血糖症患者指導管理料
・医科点数表区分番号C101―3の在宅妊娠糖尿病患者指導管理料
・医科点数表区分番号C102の在宅自己腹膜灌流指導管理料
・医科点数表区分番号C102―2の在宅血液透析指導管理料
・医科点数表区分番号C103の在宅酸素療法指導管理料
・医科点数表区分番号C104の在宅中心静脈栄養法指導管理料
・医科点数表区分番号C105の在宅成分栄養経管栄養法指導管理料
・医科点数表区分番号C105―2の在宅小児経管栄養法指導管理料
・医科点数表区分番号C105―3の在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料
・医科点数表区分番号C106の在宅自己導尿指導管理料
・医科点数表区分番号C107の在宅人工呼吸指導管理料
・医科点数表区分番号C107―2の在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料
・医科点数表区分番号C108の在宅悪性腫瘍等患者指導管理料
・医科点数表区分番号C108―2の在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料
・医科点数表区分番号C109の在宅寝たきり患者処置指導管理料
・医科点数表区分番号C110の在宅自己疼痛管理指導管理料
・医科点数表区分番号C110―2の在宅振戦等刺激装置治療指導管理料
・医科点数表区分番号C110―3の在宅迷走神経電気刺激治療指導管理料
・医科点数表区分番号C110―4の在宅仙骨神経刺激療法指導管理料
・医科点数表区分番号C111の在宅肺高血圧症患者指導管理料
・医科点数表区分番号C112の在宅気管切開患者指導管理料
・医科点数表区分番号C114の在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料
・医科点数表区分番号C116の在宅植込型補助人工心臓(非拍動流型)指導管理料
・医科点数表区分番号C117の在宅経腸投薬指導管理料
・医科点数表区分番号C118の在宅腫瘍治療電場療法指導管理料
・医科点数表区分番号C119の在宅経肛門的自己洗腸指導管理料
・医科点数表区分番号C120の在宅中耳加圧療法指導管理料
*特養関連部分のみ抜粋

見慣れない文字が多くて、読むのが嫌になるかとは思いますが、簡単に言うとこんな感じです。

配置医師
・施設に入所している利用者にした診察は介護報酬に含まれている。
・よって各種管理料など一部の診療報酬は算定できない。

先ほどと全く一緒です。ただその項目を細かく書いているだけです。

さて、ここで出てきた、「保険医」や「診療報酬」について全くわからない人もいるかと思いますので、簡単に説明したいと思います。

「保険医」ってなに?

「保険医」とは、「保険診療ができる医師」のことを指します。

皆さんが病院に行くと、健康保険などを使って診察を受けますよね?
健康保険などを使って行う診察を「保険診療」と言います。

細かい話ですが、正確に言うと「医師」と「保険診療ができる医師」は異なります。

通常、「医師」を名乗るには、国家試験に合格して「医師免許」を持つ必要があります。
その上で、都道府県に「保険医」として登録をして初めて「保険診療ができる医師」になります。

まあ通常、病院で勤務したりするので、ほぼ全員が「保険医」の登録をしていると思います。
まれに、「研究しかしない医師」「美容外科などの自由診療しかしない医師」とかで登録をしていない人もいるかもしれません。

保険医:都道府県に保険医登録した、保険診療ができる医師

診療報酬ってどういうもの?

「診療報酬」とは、「介護報酬」みたいに、国が定めた「医療行為に対する報酬」です。

大きく分けると、
診察料…初診料とか再診料などの基本料金みたいなもの
管理料…糖尿病とか病気の長期的管理・指導を行ったときのお金
・処置料…軟膏ぬったり傷の手当したり採血したり、主に手技にかかるお金
・処方箋料…処方箋出した時のもの
・薬代…使った薬代
・手術料…手術したときの代金
・物品代…使った材料費など
などになります。

これを踏まえて、再び配置医師の算定できないものを見るとこうなります。

配置医師
・施設に入所している利用者にした診察は介護報酬に含まれている。
・よって診療報酬のうち、診察料やほとんど管理料の算定できない。その他の処方箋料や手技料等は算定できるものもある。

このように、「配置医師」となった医師は、診察料や管理料が算定できません。
実はこれはかなり大きな話で、診療所をやっている場合、収益のうち管理料がかなりの割合を占めています。
ですので、管理料の取れない「配置医師」をやることは、収益ベースで考えるとあまりお得ではありません。

ですので、「配置医師」をしてくれている先生方には、とてもありがたく感じるところだったりします。

ここまでのまとめ

配置医師
・特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準に基づき配置されている保険医
・特別養護老人ホームに併設されている病院又は診療所の保険医
・施設に入所している利用者にした診察は介護報酬に含まれている。
・診療報酬のうち、診察料やほとんど管理料の算定できない。その他の処方箋料や手技料等は算定できるものもある。

全体のまとめ

介護系の法令で規定される「配置医師」とは、

・入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行う医師として介護老人福祉施設に置かれる従業員
・勤務は1回3~4時間、月4回程度を想定

とされている。

医療系の法令、特に診療報酬関係で規定される「配置医師」とは、

・「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行う医師として介護老人福祉施設に置かれる従業員」として配置されている保険医
に加え、
・特別養護老人ホームに併設されている病院又は診療所の保険医
のことを指す。

また診療報酬上では、「配置医師」は初診料、再診料などの一部診察料、一部の管理料は算定できない(介護報酬に含まれる)。